コイルに直流電圧を印加すると、
時間と共にコイルに流れる電流は増加し、磁束密度も上昇していきます。
しかし無限大に上昇するわけではなくコイルのコア(コイルが巻かれている鉄心)の材質、
形状によって決まる最大磁束密度を超えると磁気飽和という状態になります。
コイルが磁気飽和するとコイルのインダクタンス(コイルと交流参照)は急速に減少し空芯コイル(コアのないコイル)と同じ状態になります。
空芯コイルはインダクタンスが非常に低く、直流に対する抵抗分はコイルの巻線の抵抗分しかありません。
ですからコイルが磁気飽和すると大電流が流れます。
スイッチングレギュレータ等のトランスの設計においてはコアの最大磁束密度(Bm)を超えないように設計しなければなりません。
磁気飽和は磁束の通路(磁気回路と言います)が閉回路に形成されているトランスなどでは起こりやすい現象で、
ソレノイドのように両端が切り離されているコイルでは常に磁束が空気中に放出されていますので磁気飽和は起こりにくくなります。スイッチングレギュレータなどでは磁気飽和を起こさずに流せる電流を大きくする為にコアの一部を切り離しギャップを設けることで
磁束の一部を空気中に放出し、磁気飽和が起こりにくくして使う場合があります。
磁束密度とは
磁束密度は前述したようにコイルやトランスの設計においては重要なファクタです。実際にコアにコイルを巻いたときの磁束密度は下記の公式でもとめられます。
- ⊿B: 磁束密度 (ガウス)
- V: コイルに印加される電圧 (V)
- t: 印加時間 (秒)
- Ae: コイルが巻かれている部分のコアの実行断面積 (cm2)
- N: コイルの巻数 (無単位)
磁束密度の計算
コアの最大磁束密度は温度によって変化します。コイルに電流が流れると磁化されたコアは発熱します。設計のさいは充分に余裕をもってコアの最大磁束密度
を超えないように実働状態での磁束密度を決めるようにします。
コアの最大磁束密度はコアのメーカー(TDKなど)のデーターシートに記載されています。
TDKのコアのカタログページ--->> https://product.tdk.com/info/ja/products/ferrite/catalog.html