オペアンプの積分回路は反転増幅回路の帰還抵抗をコンデンサに置き換えた回路です。
入力と出力の関係は

----式1
となります。公式から理解できるように入力電圧Vinを積分した値に比例した電圧を取り出すことが出来ます。
オペアンプの積分回路はいろいろな応用が出来ます。積分回路を理解することで応用の範囲が広がります。
それでは積分回路の実際の動作を見ていきましょう。
直流信号での積分回路の動作
図1の回路に電圧が一定の直流電圧を印加するとどうなるでしょうか?。
たとえば-1Vを入力した場合、出力は一定の傾斜で上昇していき最後にはオペアンプが飽和し、一定の電圧になります。(図3)
図3の傾斜の部分が入力電圧Vinを積分した電圧に比例した電圧です。オペアンプの「+」端子と「-」端子はイマジナリショートの状態にあり常に一定の
電位(0V)になりますからコンデンサにはVin/RSの一定の電流が流れることになります。これはコンデンサの定電流充電と同じです。
ですから傾斜の部分の電圧はコンデンサの定電流充電の公式が適用されますので
----式2 となります
さてこれだけではオペアンプの積分回路がなんの役に立つか判りませんので次に積分回路を応用した回路を紹介します。
図4の回路は鋸波を発生させる回路です。鋸波や三角波はPW変調(PWM)のキャリア信号に使われます。
コンデンサCfに並列にアナログスイッチを接続し、一定の周期でONにし、積分コンデンサCfの電荷を放電し鋸波を生成しています。
アナログスイッチにはオン抵抗がありますから、完全な急速放電にはならず若干ですが傾斜がついてリセットされます。またコンデンサの容量が大きいとリセット時間も大きく取らなければなりません。
交流信号での積分回路の動作
積分回路の交流信号への応用は代表的なものにフィルタ回路や波形変換があります。ここでは方形波交流信号を三角波に変換する方法、アクティブフィルタの基礎である1次フィルタについて簡単に説明
します。
***積分回路のフィルタの応用***
この回路は図1の積分回路のコンデンサに並列に抵抗を接続したもので、1次ローパスフィルタと呼ばれるフィルタ回路です。ローパスフィルタとは一定の周波数を
境にしてその周波数より低い周波数はそのまま減衰せずに通過させ、それより高い周波数は減衰させる回路を言います。
追加した抵抗は一般的にシャント抵抗と呼ばれ、減衰が始まる境目の周波数を決める抵抗です。そしてこの境目の周波数を遮断周波数、又はカットオフ周波数と呼びます。
カットオフ周波数 fC は次式で求められます。
減衰の度合いはカットオフ周波数を境目にして-6db/oct(-20db/dec)で減衰します。これはオペアンプ周波数特性そのものです。参照-->オペアンプのゲイン(利得)
図6の回路で入力周波数を f0 とすると
f0 ≫ fCのときは積分動作
f0 ≪ fCのときはゲイン Rf/RSの単なる反転増幅回路として動作
積分回路を応用したこのフィルタ回路はノイズ除去の目的でオペアンプ回路では頻繁に使われます。
***積分回路で方形波交流信号を三角波に変換***
図6の回路に方形波交流信号を入力すると三角波に変換できます。それぞれの定数は式2に基づいて決めます。
定数の決め方の例
2VP-P 1kHzの交流方形波を三角波に変換する場合
- (1)出力電圧 VOUTを決めます。
- VOUTは三角波のピークツウピークの電圧です。入力波形と同じレベルにするには2Vになります。
- (2)入力電圧 VINについて。
- VINは入力信号の直流になっている部分ですから1Vになります。
- (3)積分時間 t は
- 入力信号の周期の 1/2 です。
これらの求めた条件から式2から逆算して Cf ・Rs を求めます。

仮に RSが10KΩとすれば Cf は0.025uFになります。
Rf は RS
の10倍程度を目安にして100KΩとします。