オペアンプはIC(集積回路)です。使い方をあやまれば破壊する場合もあります。「使い方」と言ってもオペアンプの使い方は多種多様です。使い方一つで
いろいろなオペアンプ回路を作製できます。これほど便利なICはありません。
オペアンプはコンパレータを除き単独で使用されることはほとんどありません。必ず帰還(出力の一部、または全部を入力側に戻すこと)を掛けて使います。
ここではとにかくオペアンプを動かしてみたいという方の為に細かい理屈は抜きにしてオペアンプの基本的使い方である「反転増幅回路」、「非反転増幅回路」について
説明します。
とはいっても前述したようにオペアンプはICです。誤った使い方をして電源を入れたとたん燃えてしまったなど無いように回路を作製するまえに最低限知っておくべきことを
説明した後上記の2つの回路について説明します。
使い方その前に オペアンプの記号
オペアンプの記号
オペアンプを使うまえにオペアンプの記号とその端子の意味を理解しておきましょう
左図はオペアンプの電源を含んだ記号です。図の左側の2本が入力です。右側の三角形の頭が出力です。+の記号がある方が非反転入力端子、-のあるほうを反転入力端子と言います。
V+がプラス電源、V-がマイナス電源を接続します。一般にはグランドは省略されます
左図のように反転入力端子が必ずしも上に配置されるとは限りません。回路図を描く都合で逆に配置される場合もあります。電源についてもおなじです。
オペアンプはパッケジの中に1個だけでなく2個、4個等複数個はいったものがあります。その場合は電源線は1個のオペアンプにのみつけます。
使い方その前に 最大定格をチェックしよう
新日本無線(JRC) NJM4558の絶対最大定格
データシートを見てオペアンプを破壊しないためにオペアンプに印加できる最大定格をチェックしましょう。
絶対最大定格とはこれ以上の電圧または電流を印加した場合ICが破壊する限界電圧、電流です。上図のNJM4558の絶対最大定格を参考に説明します。
--電源電圧--
上記の図では記号はV+/V-で値は±18Vです。プラス電源は+18V、マイナス電源は-18Vの意味です。記号はこの他にVcc+/Vcc-、Vcc/VEE
等があります。
- プラス電源、プラス電源端子の記号
- V+、Vcc+、VDD
- マイナス電源、マイナス電源端子
- V-、Vcc-、VEE
一般の使い方では最大定格で使うことはありません。例として±18Vものなら±15V等
マイナス電源端子はグランドに接続される使い方もあります。また単電源で動作するオペアンプもあります(最近は多い)。
--差動入力電圧--
反転端子と非反転端子間に印加できる電圧の最大値です。NJM4558の場合は±30Vになっています。±で表現しているのはどの入力端子を基準にするかで
極性が正反対になる為です。但しこの電圧は電源電圧を±18Vを印加してるときの条件です。一般的には電源電圧を超えないようにします。
--同相入力電圧--
反転端子と非反転端子に同じ極性の電圧が印加される場合の許容限界電圧です。一般に電源電圧まで許容されます。この値はここまでならオペアンプは壊れない
と言う電圧で、オペアンプが正常に動作する電圧とは違います。オペアンプが正常動作する同相入力電圧の範囲はデータシートの電気的特性のなかで同相入力電圧範囲
として記載されています。
使い方の基本、2つの増幅回路
オペアンプの基本的使い方である反転増幅回路と非反転増幅回路について説明します。この2つの回路はオペアンプ回路の基本中の基本です。
おのおのの回路の増幅度(ゲイン)は近似式で表しています。オペアンプ自体の利得(ゲイン)と入力インピーダンスを加味した正規の計算式はありますが近似式で計算した値と
正規の計算式で計算した値はほとんど違いがありません。たとえば100db(10万倍)の増幅度をもつオペアンプで100倍の増幅回路を作製したとしてもゲイン誤差は0.1%、10倍の増幅回路では0.01%になります。一般の使い方では近似式で充分です。
それに計算式の違いによる誤差よりもオペアンプ周辺素子の誤差がはるかに大きく計算式の違いは全くと言っていいほど問題になりません。
--反転増幅回路--
回路の増幅率
入出力の関係
反転増幅回路は入力電圧の極性と出力電圧の極性が逆になります。つまりVinにプラスの電圧を印加するとVoutはマイナスの電圧が出力されます。(電源が±の場合)
RCはバイアス電流によるオフセットをキャンセルします。計算式は

RCはなくても動作します。出力オフセット(入力がゼロの時に出力に現れる電圧)が気にならない回路ではつけなくてもいいでしょう。
--非反転増幅回路--
回路の増幅率
入出力の関係
非反転増幅回路は入力電圧の極性と出力電圧の極性が同じになります。Vinにプラスの電圧を印加すると出力にもプラスの電圧が出力されます。非反転増幅回路の増幅率は
公式から判るように1以上です。
非反転増幅回路の場合、入力電圧が直接オペアンプの入力端子に印加されます。同相入力電圧を超えないようにしなければいけません。
増幅回路の抵抗値について
増幅回路のゲインは抵抗値の比できまります。ですからRS=2MΩ、Rf=10MΩとしてもよいのでしょうか?。答えは否です。
実際のオペアンプの入力インピーダンス、出力インピーダンスは有限です。RSをオペアンプの入力抵抗(入力インピーダンス)より高い
抵抗をつけると信号源からの電流がRfに流れず、オペアンプ内部に多く流れゲインに誤差が生じます。またRS、Rfにはバイアス電流、オフセット電流が
流れますので入力オフセット電圧が大きくなり出力が持ち上がった状態(出力オフセット)になります。そのうえ大きい抵抗を使うと回路全体のインピーダンスが上がり外来ノイズを受けやすくなります。
それではRS=2Ω、Rf=10Ωとしたらどうでしょう?。これも否です。入力部の抵抗RSは信号源からみれば負荷抵抗になります。
出力インピーダンスが充分に低い信号源ならいいのですがこれがオペアンプだとしたらそのオペアンプはオーブンのように発熱してしまうでしょう。また
オペアンプの出力電流はRfと次段の回路を駆動するのに使われます。すなわちオペアンプの出力はRfと次段の回路の入力インピーダンスの並列になった負荷を駆動することになります。
仮に次段の入力インピーダンスが10Ωだとするとオペアンプは5Ωの負荷を駆動することになります。これでは前述と同じようにオペアンプは発熱してしまいます(
出力電圧も下がります)。
増幅回路の抵抗値はおおまかに言ってRSはオペアンプの入力抵抗の1/10以下、Rfはオペアンプ自身の出力インピーダンスの10倍程度を目安にするとよいでしょう。
一般的に反転増幅回路ではRSを10KΩ前後とし、それに合わせてRfを決めてるようです。
こちらのページも参考にしてください→オペアンプの原理と基礎