MOSFETはスイッチング素子として使う場合がほとんどです。特に高電流、高電圧ではバイポーラトランジスタより電力損失が少なく使うことが出来ます。
例えば、選択するMOSFET、トランジスタによって単純に比較は出来ませんが 1Aの電流をスイッチングしたとき電力損失はMOSFETは0.1W、バイポーラ
トランジスタは0.6Wのもなります。
ここではパワーMOSFET(エンハンスメント型)のスイッチングドライブ方法について説明します。モータの駆動回路で使われるMOSFETのHブリッジ、ハーフブリッジの
基本となる事項です。
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パワーMOSFETのスイッチング駆動はNチャンネルMOSFET使うか、PチャンネルMOSFETを使うかによって違います。又、負荷をドレイン側に置くか
ソース側に置くかによっても違います。但し、NチャネルMOSFET、PチャンネルMOSFETもゲート、ソース間に電圧を印加して駆動します。
こちらも参照してくださいMOSトランジスタ
MOSFETのスイッチング駆動の基本
MOSFETは電圧駆動型の素子です。ゲート入力インピーダンスが非常に高く、電流がわずかでも電圧を加えればMOSFETはONします。
それではその電圧の大きさはいくらなのでしょう。データシートを見てみましょう。
重要なパラメータはVDSS、ID、
RDS(on)、VGSS、VGS(th)、QGです。
パラメータの意味
- VDSS (ドレイン・ソース間最大電圧)
- ドレイン・ソース間に印加できる最大電圧。瞬時ともいえども動作中この電圧をこえてはいけません。メーカーの推奨地は80%以内ですが実設計では50~60%ga
程度が望ましい。
- ID (最大ドレイン電流)
- MOSFETに流すことが出来る最大電流。VDSSと同様、実設計では50~60%程度が望ましい。
- RDS(on) (ドレイン・ソース間オン抵抗)
- MOSFETが完全にオンしたときのドレイン・ソース間の抵抗。MOSFETの自己損失になります。
- VGSS (ゲート・ソース間最大電圧)
- ゲート・ソース間に印加できる最大電圧
- VGS(th)又はVth (ゲート・ソース閾値電圧)
- ドレイン電流がある一定以上流れ始めるときのゲート・ソース間電圧。一般にこの電圧をもとにゲート・ソース間の電圧をきめます。
- QG (ゲート入力電荷量)
- MOSFETの起動開始時にゲートに注入が必要な電荷量。
*注意 ゲート・ソース間電圧はソースが基準電位です。グランドではありません
MOSFET等価回路図2
図2はパワーMOSFETの等価回路図です。
MOSFETは入力容量をもっています。この入力容量を充電することによってMOSFETはONします。充電後はゲート電流はほとんど流れません。OFFに
するときは入力容量から放電させます。
バイポーラトランジスタはONしている間ベース電流を流し続けなければなりません。
そのため大電力を駆動する場合バイポーラトランジスタは駆動電力もそれなり必要ですが、
MOSFETは入力容量の充、放電時のみ電流を必要とするだけですからバイポーラトランジスタに比較して駆動電力ははるかに少なくてすみます。
次の図はMOSFETのゲート・ソース間の電圧、電流の状態を表現しています。
N-MOSFETのスイッチング駆動の設計
駆動電圧 VGSの決め方
MOSFETを駆動する電圧、 ゲート・ソース間電圧 VGSはVGS(th)とVGSSの間の電圧に設定しますが
MOSFETが目的の電流を充分に流せる電圧に設定しなければなりません。但しVGSSを絶対に超えてはなりません。
VGSの目安を求めるにはデータシートのID-VGSグラフから読み取ります
例えば60Aの電流を流そうとするとVGSは6V以上の電圧が必要になります。
ゲート抵抗 RG の決め方
MOSFETは一般にゲートに抵抗を接続して駆動します。この抵抗は突入電流を抑制し、出力のリンギングを軽減します。おおむね数Ω~1k
Ωが使われます。
このゲート抵抗は次の計算式で求めることが出来ますが凡そ数十Ω~100Ωの抵抗でほとんどの回路で満足できる結果が得られると思います。
ゲート入力容量 QG から求める方法
例えば、立上り時間が100ns、QG max=110nC、ゲート駆動電圧5Vならば 110n/100=1.1A、5/1.1≒4.7Ωとなります。
より精密に求めるには
精密な計算をしたい場合はデータシートのQG-VGSグラフからVGSに対応した
QGを読み取り上記の計算方式で算出します。
左図から、例えばVGS10V、VDS120VではQGは70nCと読めます。この70nCを入力容量として上記の計算方法でRGを
求めます。
ゲート抵抗 RG は出力のリンギングを軽減すると述べましたが実際にどのよう波形になるかその例を下記に示します。

抵抗値が低すぎる場合
リンギングが大きく出る

抵抗値が適正な場合

抵抗値が大きすぎる場合
立上り、立下りがなまる
消費電力の計算
MOSFETの消費電力はゲート駆動電力と自己消費電力の合算になりますが実設計ではゲート駆動電力は無視してもかまいません。MOSFETの自己
消費電力はRDS(on)とIDから計算します。次のようになります。なおRDS(on)は温度変化します。高温や温度変化の激しい
環境で使用する場合はデータシートの周囲温度_ドレインソース間オン抵抗のグラフでRDS(on)を求めてください。
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