トランジスタの増幅回路の設計は「バイアス回路の設計」と置き換えてもいいかもしれません。そしてトランジスタ回路の設計の基本と言えるでしょう。
バイアス回路は大きく分けて固定バイアス回路と自己バイアス回路の2通りがあります。自己バイアス回路は電流帰還型バイアス回路とも呼ばれ、最も多く使われる回路です。
このページでは固定バイアス回路について解説します。
バイアスの解説はこちらを参考にしてください→トランジスタのバイアス
固定バイアスを使った増幅回路
固定バイアス回路の一般的設計手順は最初に電源電圧を決め、負荷RL又はコレクタ電流ICを決めます。先にRLが決まっていればIC
が決まり、ICが決まっていればRLが決まると言うことになります。
一般にはコレクタ電流ICを先に決めることが多いようです。
プリアンプ等と呼ばれる、一番最初に微弱な信号(マイクの出力、プレーヤーの出力等)を増幅する増幅回路のトランジスタのバイアス電流は出来るだけ少なくし、
雑音の発生を抑えると言う観点からコレクタ電流は小さめに決められる様です。実際には数mA、2mAとか2.5mA等が採用されているようです。
参考書的な本にはよく登場する数値で、数値の根拠をさがしても見つけられずもやもやした気分のまま実験した経験があります。この数値はたぶん先駆者の先輩がたが
実験して得た結果ではないでしょうか。
自分で、コレクタ電流をいろいろ変えて出力波形がどう変化するか、温度変化に対してどうなのか実験してみるのも有意義なことかと思います。
固定バイアス回路の負荷抵抗とコレクタ電流の関係
増幅回路で最も大きな出力を得るにはバイアス点(動作の基準電位)を電源電圧の1/2にすることです。この理由はトランジスタのバイアス
を御覧いただくと理解できると思います。ですからコレクタ電流ICと負荷抵抗RLで生ずる電圧降下VLが電源電圧の1/2になるように負荷抵抗、コレクタ電流を選択
すればいいのです。増幅回路の負荷抵抗RLとコレクタ電流ICの関係式は下記のようになります。

固定バイアス回路の抵抗値の決め方
負荷抵抗、又はコレクタ電流が決まれば固定バイアス回路を使った増幅回路の設計の諸条件は整います。それらを整理してみましょう。
設計条件
- 電源電圧: 9V
- コレクタ電流: 2.5mA
- バイアス電圧(VBE): 0.67V
- 直流電流増幅率(hFE): 140
VBEとhFEは使用するトランジスタのデータシートから判ります。
これらの条件から固定バイアス回路を
使った増幅回路の各々の抵抗値を計算して見ましょう。
負荷抵抗RL
ベース抵抗RB
ベース抵抗RBはコレクタ電流2.5mAを流すために必要なベース電流から決めます。
ベース電流IBは
ベース抵抗RBは
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