トランジスタを交流的に動作させるときはバイアスをかける必要があります。
英語のバイアスは"偏らせる"と言う意味があります。まさしくバイアスをかけるとは、トランジスタの動作基準電位を決めることに他ならないのです。
トランジスタでリレーを駆動するときは一般的にはON-OFF動作がほとんどですからこの場合はバイアスは必要ありませんが交流増幅回路ではバイアスを掛けずに動作させると出力波形は大きく歪、実用にはなりません。
バイアスとは
トランジスタのバイアスとは一言でいうならばトランジスタの動作の基準となる電圧を設定するということになるかと思います。
半導体であるトランジスタは特性にバラツキも多く、温度に敏感です。温度変化や特性のバラツキ、電源の変動があってもバイアス点が一定になるように設計しなければなりません。
では具体的にバイアスとはなにか?説明します。図1はバイアス無のトランジスタに交流電圧を印加したときの状態をしめしています。
図1から判るように入力信号に対してコレクタ電流の変化は入力信号波形とはまるで違う波形になっています。なぜこうなるかと言うとトランジスタのベース、エミッタ間は
ダイオードのようになっていますからある一定上の電圧(シリコントランジスタで約0.6V)がなければ電流は流れませんしましてや逆方向電圧では全く流れません。
ですからベース電流は正方向の電圧が印加されたときのみ流れることになり、コレクタ電流もそれに対応して流れることになります。
では図1の回路にちょっと手を加えて図2のようにしてみましょう。
図2ではRBを通して直流電圧がベース、エミッタ間に印加されています。これによって流れるベース電流によってコレクタ電流が流れ、RLに電圧降下を
もたらします。この状態でVinに交流信号を入力すると出力は図3のように図1の場合とは違う、入力と相似な波形が得られます。
このようにあらかじめベース電流を流しておき、動作の基準電位を設定しておくことを "バイアスをかける" と表現します。
バイアス方法のいろいろ
バイアスの方法は幾つかの方法があります。下図によく使われるバイアスの方法とその短所、長所を記述しておきます。
固定バイアス
- 長所:
- 減電圧特性は他の回路より良い
- 短所:
- hfeのバラツキに対してIcの変化が大きい
自己バイアス(1)
- 長所:
- Vbeの温度変化や減電圧特性に優れている
- 短所:
- hfeのバラツキに対してIcの変化がやや大きい
自己バイアス(2)
- 長所:
- hfeのバラツキに対して安定
- 短所:
- Vbeの変化や減電圧に対して弱い
*実際のトランジスタ回路ではこれらの回路が幾つか組み合わされて構成されているのが一般的です。
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