電流帰還バイアスは増幅回路のなかでは最も多く使われるバイアス回路です。
このバイアスを使った増幅回路の
特徴は温度や電源電圧が多少変動してもコレクタ電流はほとんど変わらず、そのうえhEFにほとんど関係なく設計できます。
電流帰還バイアスの動作を簡単に説明します。
トランジスタのエミッタ側の抵抗(RE)をエミッタ抵抗と呼びます。この抵抗がコレクタ電流を安定にしてくれる働きをします。
別名、安定抵抗とも呼びます。
RA、RBはブリーダ抵抗と呼ばれ電源電圧を分割し、ベース、グランド間の電圧を安定に保つ働きをします。
(1) バイアス電圧VBEはVBとVEの差になり次のような関係になります。VBはベース電流IBの
変化にかかわらずほとんど一定の電圧
(2) さて、いま温度が上昇してコレクタ電流ICが増加すると、エミッタ電流IEも増加するから、
IEREも増加して、VBEが減少します。(上記の式を参照)
(3) VBEが減少すればベース電流IBも減少し、コレクタ電流の増加を抑えます。(コレクタ電流の
変動が抑えられる)
電流帰還バイアスを使った増幅回路
電流帰還バイアス回路の抵抗値の決め方
電流帰還バイアスを使った増幅回路の設計手順は固定バイアスと同じように電源電圧を決め、コレクタ電流又は負荷抵抗を決め、設計の諸条件を決めます。
設計条件
- 電源電圧: 9V
- コレクタ電流: 2.5mA
- エミッタ電流=コレクタ電流: 2.5mA
- エミッタ電圧=電源電圧の20%
- IA(RAに流れる電流)はIB(ベース電流)の10倍
- バイアス電圧(VBE): 0.67V
- 直流電流増幅率(hFE): 140
VBEとhFEは使用するトランジスタのデータシートから判ります。
これらの条件から電流帰還バイアス回路を
使った増幅回路の各々の抵抗値を計算して見ましょう。
エミッタ抵抗RE
エミッタ電圧は電源電圧の20%、エミッタ電流=コレクタ電流であるから
ブリーダ抵抗RA
RAの端子電圧VBは
流す電流はベース電流の10倍、そのベース電流は
ブリーダ抵抗RAは
ブリーダ抵抗RB
RBに流れる電流は
RBの端子電圧VAは
ブリーダ抵抗RBは
バイパスコンデンサCE
バイパスコンデンサCEは入力信号の交流成分がエミッタ抵抗に流れてエミッタ電圧を位押し上げ、出力を低下させるのを防止します。
従って、入力信号の下限周波数に対して充分に低いリアクタンスになるようします。
参考→コンデンサと交流
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